日本は今、高齢化長寿化社会。しかし確実に相続の時は来ます。財産の多少にかかわらず、相続に何らかの対策は必要です。
特に不動産は、簡単に分割できず、換金も時間がかかり、いざ相続が発生して遺産分割するとなると取り扱いが難しいものです。
だからこそ、この時代に不動産業に携わる者として、「相続」の問題は気になります。
相続紛争対策としては、遺言が有効
遺産分割の話し合いは、故人や遺族の事情があったり、タイミングが難しかったりします。
スムーズな遺産分割のために遺言を用意しましょう。
- 相続の話し合いが不要。
- 法定相続分を変更できるし、相続人以外にも財産を渡せる。
- 遺言に表すことで、相続財産を明らかにできる。
遺言なら、公正証書遺言がおススメ
自筆証書遺言は要件が厳しいので、公証人が作る「公正証書遺言」がおススメです。
- 内容に一応のチェックがあり、形式的にも問題がない。
- 認知症等を理由に無効となるリスクや、偽造と疑われるリスクが少ない。
- 公証人役場に長期間原本が保存され、どこの公証人役場でも検索できる。
遺言に代わる信託
「信託とは、委託者が受託者に対し、受益者のために契約又は遺言により財産の譲渡をして、財産の管理又は処分をさせること。」
「後継ぎ遺贈型受益者連続信託(信託法91条)」
…自分を第一次受益者、自分の死亡時に妻を第二次受益者、さらに妻死亡時に長男を第三次受益者、というように指定できる。
遺言では、自分の死亡時のことしか指定できないので、この点が「遺言に代わる信託」の利点と言えます。
生前の信託の活用
認知症が進めば、所有している不動産の売買も賃貸借も遺産分割もできず、遺言の作成も困難になります。
ある意味、相続よりも認知症の方が厄介かもしれませんね。
厚生労働省のデータによれば、なんと65歳以上の28%は、すでに認知症であるかその疑いがあるそうです。
信託することで、受託者が管理処分権を有することができますので、
信頼のおける身内などの受託者に「信託譲渡」すると安心でしょう。(家族信託)
所有不動産の収益はそのまま父親に、管理面だけ長男が引き継ぐ、ということができます。
家族信託は、生前贈与よりも税金など費用面でのメリットがありますし、後見人制度のような融通が利かないというデメリットはありません。
平成19年から始まったということもあり、まだ一般的ではありませんが、もっと広く知られるべき制度だと思います。