秋ですねぇ。あんなに暑かった夏が、うそのような涼しさです。
普通に外を歩ける、と感動してしまいます。これなら、運動の秋も、オシャレの秋も、楽しめそう!
食欲の秋はダイエットには向きませんが、読書の秋、勉強の秋、いい季節がやってきました。
勉強の秋と言えば、不動産業界では、この時期、資格試験に向けて熱心に勉強する人たちがいます。
目次
「宅地建物取引士」…不動産業に携わるにあたって、なくてはならない資格です。
ところでこの資格、専門外の人や新人社員があっさり合格してベテラン営業さんが不合格、ということがたまにあります。
理由を考えるに、
何も知らない人は、参考書をそのまま知識として素直に受け入れることができて合格しやすく、一方で
業務に精通したベテランさんは、自分の得意分野が出題されるとこだわりがあったりして合格しにくいのではないか・・・
と考えていました。
これも間違いではないと思いますが、
別の観点でヒントになりそうなのが、この本です。
題名から興味を持ち、発行されてすぐ読みたかったのですが、今年になってようやく手にしました。
『 AI VS. 教科書が読めない子どもたち』 新井紀子著 2018年2月発行
カバーの折り返し部分には、こうあります。
大規模な調査の結果わかった驚愕の実態
――日本の中高校生の多くは、中学校の教科書の文章を正確に理解できない。
多くの仕事がAIに代替される将来、読解力のない人間は失業するしかない……。
気鋭の数学者が導き出した最悪のシナリオと教育への提言。
文章は、数学者というだけあって理論的で、内容も分かりやすいですが、AIつまり人工知能とかコンピューターの話題です。
特に興味深かったのは、「第三章 教科書が読めない―全国読解力調査」で、その中の見出しは、
人間は「AIにできない仕事」ができるか?
数学ができないのか、問題文を理解していないのか?――大学生数学基本調査
全国2万5000人の基礎的読解力を調査
3人に1人が、簡単な文章が読めない
偏差値と読解力
ここで宅建士の資格試験とどう関係があるかと言いますと、
つまり、宅建士に限らず試験というものは、問題文を読んで問題を解き正解を回答する、という作業が必要ですが、
もし問題文を理解するための読解力が不足していると、問題の意図をつかめず、本当は知っていても正解できない、
という事態になりかねないということです。
当然日本語で書かれていますから、読めば文章は分かるでしょう、しかしその意味を理解できる読解力というのはどうやらまた別物のようです。
日常の業務でバリバリ宅建業務をこなしていても、
いざ宅建士の試験問題にあたると、書かれている内容の意味・問われている問題の意図を即座に理解できない、ということがありえます。
読解力に問題があるのは、現代日本の中高校生だけではなくて、大人も当然ある程度含まれるのではないでしょうか。
ですから、これから宅建士に限らず資格試験を受ける人は、
読解力をすぐに大きく向上させることは難しくても、
過去問などを解いて、問題文に慣れておくことは大事でしょう。
何を聞かれていて何を回答するべきか、そのパターンに慣れて時間内に判断する練習は有効と思われます。
もちろん、試験勉強はしっかり、した上でのことですよ。
そして、試験に限らず、
読解力は、会話やメールといった日頃のコミュニケーションにも影響しているように思えてなりません。
何が問題文で、答えは何が正しいのか、回答の選択肢がない中で、瞬時に判断、できますか?
難しいですよねぇ。難しいです。
だからこそ、日頃の意志確認、コミュニケーションは、大事にしなくてはなりません。
話をしたつもりが、その内容は実は伝わっていないかもしれないのです。
特に不動産取引など大事な契約には、誤解や勘違いは許されません。
不動産取引の用語と常識が一般の人には分かりにくいような時には、契約に至るまで、丁寧な説明と確認が求められます。
文章だけでなく、写真や図表、イラストを用いるのもいいですし。
そしてさらには、契約書をはじめとする文書で、お互いの認識を明らかにして残しておく必要があります。
あ、この場合、契約書を読む読解力はある、という前提ですけどもね。